COLUMN

ふくしまの酒 STYLE01

ふくしまの酒×
MUSIC

ふくしまの酒とペアリングが楽しめるのは料理だけじゃない。こんなものや、あんなものとも合わせてみたら、予想外の“化学反応”を起こして、あなたの生活を楽しく彩ってくれるはず……そんな新コーナーが「ふくしまの酒STYLE」。第1回は、元 DJという異色の経歴を持つ、会津の日本酒専門店・植木屋商店の18代目白井與平さんが登場。彼がレコメンドする、ふくしまの酒と音楽とのペアリング! その相性は果たして……?

白井與平 (しらい よへい)

大学進学とともに上京し、学生時代は渋谷のクラブ「CAVE」などでDJとして活動。しかし、23歳のときに先代が倒れて会津にUターン。24歳で「植木屋商店」の跡継ぎとなる。

会津の地酒・日本酒専門店の植木屋商店

お酒をもっと美味しくする
音楽の魔法

「レコードは高校生の頃からの趣味」と語る白井さん。店内には、当時から収集してきた、おびただしい数のレコードがズラリと並んでいる。そこで今回は、白井さんの膨大なLPコレクションの中からセレクトしていただいた。音楽同様、伝統を受け継ぎながら常に最先端を走り続けるふくしまの酒にはロマンがある。「昔から好きだったお気に入りのアーティストが新しいアルバムをリリースした時に、ワクワクしながらレコード盤に針を落とすように、ワクワクしながら今年の絞りたてを唎(き)いてみる……そこも同じ感覚ですね」。今回は、中でもピアノなど、鍵盤楽器の音色のするアルバムから選んだというペアリングを、早速ご紹介しよう…!

  1. PAIRING 01
    泉川純米吟醸×藤原ヒロシ
    『HIROSHI FUJIWARA
    in DUB CONFERENCE』

    泉川 純米吟醸(廣木酒造)

    『飛露喜』醸造元の地元銘柄定番ライン。

    藤原ヒロシ『HIROSHI FUJIWARA
    in DUB CONFERENCE』(VIJP23001)

    ソロ第2作。ピアノやグラス・ハープの繊細な
    演奏によるインスト曲集。

    時を経ても色褪せない「マスターピース」

    藤原ヒロシさんは高校の時から大好きで、DJを始めようと思ったのはこの人の影響です。一方、『泉川 純米吟醸』は、私が地酒と意識して売り始めた最初の銘柄です。同じ蔵元の『飛露喜』は全国展開していますが、泉川は私にとっての一番のスタンダード、目安となる物差しです。このアルバムから感じる「音の色合い」「センスの高さ」と、廣木酒造の「品質」が共通項なんです。意識の高さ、共にブレることのない洗練された「マスターピース」です。

  2. PAIRING 02
    素品すっぴん彌右衛門×
    セロニアス・モンク『the man I love』

    素品すっぴん彌右衛門(大和川酒造)

    生酛(きもと)造りで醸したオーガニックな日本酒。

    セロニアス・モンク『the man I love』(BLP 30141)

    1973年発表のロンドン・セッション第2弾。
    アート・ブレイキー、アル・マッキボン参加のトリオ・セッション。

    リラックスしながらも、
    感覚を研ぎすまして味わいたい

    この酒は、自社栽培の山田錦を、ほとんど磨かないことで米本来の味わいを表現し、酵母を添加しない生酛造りで仕込んだオーガニック日本酒。包み込むような酸味と米の旨味・苦み・渋みが一体となった滋味深い味わいの純米酒です。このアルバムの演奏は、息を呑むような凛とした空気がありながら、晩年の貫禄の名演。『the man I love』とともに、常温のすっぴんを感覚を研ぎすまして味わいたいですね。

  3. PAIRING 03
    山の井40カップ×
    バド・パウエル『Relaxin' At Home, 61-64』

    山の井40カップ(会津酒造)

    言わずと知れた「山の井」ブランドの定番商品。

    バド・パウエル『Relaxin' At Home, 61-64』(MS60042)

    ピアノトリオの先駆者の、晩年の名盤。

    夕暮れ時、リラックス気分で楽しみたい

    ワンカップといえば安い酒のイメージですが、『山の井40』は、全国新酒鑑評会に出品されたお酒。カジュアルな場面で最高級の大吟醸を楽しんでほしいという思いから、当店オリジナルとして発売しました。『Relaxin' At Home, 61-64』は、バド・パウエルがパリの自宅で録音した作品。仲間に囲まれ、鼻歌まじりにピアノを弾いているリラックスムード満点のアルバムです。気の合う仲間といい時間を過ごすのにぴったりな組み合わせですね。

  4. PAIRING 04
    会津娘『羽黒西64』×
    ジャッキー・ミットゥ
    『Macka Fat』

    会津娘『羽黒西64』(高橋庄作酒造店)

    一枚の田んぼで穫れたお米ごとに仕込んだ、個性的な純米吟醸酒「穣」シリーズの一品。

    ジャッキー・ミットゥ『Macka Fat』(SOCD1120)

    レゲエ音楽を代表するオルガニストの名盤。

    「土地に根ざす人の生きざま・温かさ」を感じる

    髙橋庄作酒造店は、地元会津の米・水・人で造り上げる「土産土法」をテーマに掲げ、自社栽培の五百万石で最大限の魅力を造り出すという考え方の酒蔵。社長は「かたくななまでの会津人の実直さ」を感じる人でお酒にもその味わいが表れています。一方、ジャッキー・ミットゥの『Macka Fat』に感じるのは、ジャマイカの土着の人々のルーディーな生きざま。「土地に根ざす人の生きざま」みたいな部分が、如実にリンクするんです。人としての温かさを感じます。

  5. PAIRING 05
    会津中将純米吟醸夢の香生原酒×
    KOKI NAKANO『PRE-CHOREOGRAPHED』

    会津中将純米吟醸夢の香生原酒(鶴乃江酒造)

    酒造好適米「夢の香」の特徴をいかし、甘味があって香りよく柔らかな口当たり。

    KOKI NAKANO『PRE-CHOREOGRAPHED』(NOF46LP)

    「音楽とダンスが密接だった時代」への憧憬を込めたセカンド・アルバム。

    ベーシック+磨き上げた個性=最先端

    福島県が開発した酒造好適米「夢の香」と酵母の組み合わせで醸した純米吟醸酒。火入れせず生原酒の状態で瓶詰した当店の別注品です。スムーズで、綺麗でふくよかで、かすかに甘酸っぱい……福島の酒の最先端を行くような味わいです。『PRE-CHOREOGRAPHED』は、ピアノの演奏をデジタルエディットすることで、新しい音色が楽しめるエレクトロニカな作品。「伝統的な楽器で奏でるアーバンでアヴァンギャルドな空気感」と、「老舗が生み出した、今一番福島らしい味わいの酒」は相性バツグンです。

名称
植木屋商店
創業
江戸時代(詳細は不明)
住所
福島県会津若松市馬場町1番35号
電話
0242-22-0215
営業時間
9:30〜19:30(毎週日曜日休)
駐車場
15台
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