酒を通じて、
「南会津」を知ってほしい
渡部景大(9代目当主)
1987年生まれ。東京農業大学卒業後、都内の酒販店での修業を経て、2010年に蔵に戻る。2012年から新たなブランド「山の井」を手がけ、「やわらかい」「きれい」「飲みやすい」をコンセプトに、理想の酒を追い求める。
「蔵元杜氏」への目覚め
1688(元禄元)年創業の「会津酒造」。9代目当主の渡部景大さんは、全国的にも高い評価を得る新たなブランド「山の井」を生んだ若き杜氏としても知られている。幼い頃から酒蔵が遊び場だったという渡部さんにとって、将来、蔵の後継者となることは自然なことだった。
「大学で経営を学んで家業を継ぐ……漠然とそんなイメージを持っていました。でも、受験の直前になって、『経営は父に学べるけれど、酒造りは杜氏さんに委ねることになる。次世代ならではの酒造りをしなければ発展がないんじゃないか』と気づいたんです」
酒造りを一から学ぼうと東京農業大学の醸造科に進んだ渡部さん。卒業後、しばらくは外の世界を経験したいと考えていたが、従事していた杜氏が体調を崩してしまい、急きょ実家に戻ることになる。
「戻ってすぐに、代々お世話になっている東京の酒屋さんが蔵を訪ねてきて『社会経験のためにうちに修行に来たら?』と誘ってくれたんです。そこで半年ほど修行をさせてもらいました」
新銘柄「山の井」は、
「チャレンジの酒」
その酒販店社長は、全国の蔵の見学にも連れていってくれた。現代の最先端の酒造りを目の当たりにして、若き蔵元の心に火が付いた。蔵を任されるようになってからは、蔵の掃除方法から酒造工程まで、すべてを一新する。数ある銘柄を『會津』に統一し、新たに『山の井』という銘柄をつくったのも、その一環だ。
「『會津』は、南会津産の酒造好適米『夢の香』を使った地産地消の酒。地元の原材料を使い、昔からのファンにも安心して楽しんでもらえるお酒です。一方、『山の井』はチャレンジの酒。僕が造りたい味のイメージが先にあって、その味を実現するためには、どんな原材料、どんな製法が最適なのかを考えるんです」自分が目指すおいしい酒ができているか? いつも自問している。目指すのは、やわらかく、きれいで、飲みやすい酒だ。
「頭の中で、酒の設計図を描いている時間が何より楽しいんです。味わいながら、南会津の空気を感じていただけたら、うれしいですね」
蔵を訪れたのは11月末。「純米活性 会津」の瓶詰めが行われていた。発酵過程で生じる炭酸を残した、口あたりのいい酒だ
左から「山の井 黒」、「山の井60」、「大吟醸 田島」、「純米大吟醸 会津」。きれいで、やわらかい酒質が会津酒造の特徴だ
CHANGE_最大の転機は?
幼稚園の頃、蔵に遊びに入ったこと。毎年、蔵に来てくれていた南部杜氏の方に遊んでもらったり、風呂に入れてもらったり、わが子のように可愛がってもらったことで、酒造りを身近なものとして感じるようになりました。
PERSON_影響を受けた人は?
宮泉銘醸の四代目・宮森義弘さん。先代から蔵を継いで迷いの中にいたとき、目指す味や原材料の選定に悩んだとき、僕の決断に対して、いつも「いいね」と背中を押してくれた。
FUTURE_あなたの未来像は?
後世に残るような酒蔵をつくりたい。酒造りを通じて、南会津という土地を多くの人に知っていただけるような表現をしたい。そして、会津酒造を好きになってほしい。
- 名称
- 会津酒造
- 創業
- 1688(元禄元)年
- 住所
- 福島県南会津郡南会津町永田字穴沢603番地
- 電話
- 0241-62-0012
- 営業時間
- 9:00〜17:00(定休日:土日・祝日)
- その他
- 見学不可、ショップあり