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ふくしまの酒 NEW WAVE

FUKUSHIMA 自然派宣言!
仁井田本家 仁井田穏彦

この土地に育まれたものだけを使って、酒を醸す

仁井田本家

仁井田穏彦(18代目当主、杜氏)

全量自然米、生酛仕込みの酒造りを実践し、自社田で酒米の自然栽培にも取り組む。「日本の田んぼを守る酒蔵になる」という決意のもと、若い世代の取り込みにも力を入れる。

「受け継ぐ」ことの重み

郡山駅から車で約30分。田園風景を眺めながら山道を走っていくと、「自然酒」の文字が描かれた大きな酒桶が見えてきた。1711(正徳元)年創業の仁井田本家は、農薬・化学肥料を一切使わずに栽培された「自然米」を原料に、町の天然水と蔵付きの酵母で日本酒を醸す、まさに“自然派”の酒蔵だ。
18代目当主の仁井田穏彦(にいだ やすひこ)さんは、2010年に歴代初の蔵元杜氏となった。仁井田本家の看板銘柄は、この自然米を使用する「にいだしぜんしゅ」。17代目の1967(昭和42)年に「金寳自然酒」の名で誕生した酒だ。
仕込み水は、自社田近くの「竹ノ内の井戸水」と、自社山から湧き出る「水抜きの湧水」という2種類の天然水を酒質によって使い分けている。仁井田本家の取締役営業部長・内藤高行さんは、「この水は先々代が残してくれたもの」と語る。
「16代目は、酒造りとともに林業も営んでいました。山に木を植え、育てることで豊かな水を育んだのです。現在では、洗米やタンクの洗浄なども、すべてこの天然水で行っています。この水を守るため、約100ヘクタールの山の管理も、私たちの重要な仕事です」
さらに、現在使っている木造の仕込み蔵も、17代目が昭和50年代に喜多方市から移築してきたものだという。各世代の当主が、次世代のこと、地域全体のことを考えてチャレンジを続けてきたからこそ、現在の仁井田本家がある。

夢は「完全自給自足の蔵」

18代目の穏彦さんは、自然栽培の元気な田んぼを1枚でも多く次世代につなげようと、2003年から、自らも自然栽培による米づくりを始めた。蔵のある田村町金沢地区の自社田では、蔵人総出で酒米づくりに取り組んでいる。さらに2020年からは、自社の山から切り出した杉材を使い、木桶をつくるという試みもスタートした。1年に1本ずつ木桶をつくり、順次琺瑯(ほうろう)タンクから切り替えていく計画だ。
この土地に育まれたものだけを使って酒を醸すことで、ここでしかできない唯一無二の酒ができあがる……10年後、20年後の仁井田本家では、どんな味わいの酒が醸されているのだろうか。期待はふくらむ。

仁井田本家への案内。シンボルマークは、下り藤の家紋に、田んぼの生き物の象徴・カエルがあしらわれている

喜多方市から移築された仕込み蔵の床や梁には柿渋が施され、ピカピカに磨き上げられている。現在使われているホーロータンクは、今後、地元産の杉でつくられた木桶に置き換えられていく

生酛づくりのようす。米や米麹をすり潰し、液体にして乳酸菌が発生しやすい環境をつくることで、空気中の乳酸菌を取り入れる

仕込み風景。酒母の入ったタンクの中に、蒸米、米麹、水を加えてかき混ぜることで発酵が促される

仁井田本家の代表銘柄。左から「百年貴醸酒(きじょうしゅ)」、「おだやか 純米吟醸 雄町」、「しぜんしゅ 純米原酒」。貴醸酒とは、仕込み水の代わりに酒を入れて仕込んだ酒のこと。仁井田本家では、創業300年の年にできた貴醸酒を原料に貴醸酒を仕込み、翌年はその貴醸酒で次の貴醸酒を仕込む……という方法で、100年後に完成する酒をつくるプロジェクトを進めている

「糀あまさけ」(左)、「あまさけ すぱっしゅ」(右)、「こうじチョコ」(手前)など、糀や乳酸菌を使った商品も開発・販売している。

POINT 01_原料米へのこだわり

2010年に「自然米使用率100%+純米100%」を達成。ゆくゆくは自社田だけでなく田村町全体を自然米の田んぼに。

POINT 02_自給自足へのこだわり

自給自足の蔵となり、自給自足の町を目指す。将来的には電力も自給自足する計画。

POINT 03_「人が集う場所」へのこだわり

「にいだの感謝祭」や「スイーツデー」などのイベントを通じて、福島を、この地域を元気にしたい。

名称
有限会社 仁井田本家
創業
1711(正徳元)年
住所
福島県郡山市田村町金沢字高屋敷139番地
電話
024-955-2222
営業時間
[電話受付] 月~金 10:00〜17:00(祝祭日・夏季休業日・年末年始等を除く)
その他
酒蔵内に売店あり。酒蔵見学は要予約。
公式サイトへ
Text / Akira Umezawa Photo / Atsushi Ishihara