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ふくしまの酒 NEW WAVE

FUKUSHIMA 自然派宣言!
髙橋庄作酒造店 髙橋 亘

“田んぼのテロワール”を追求する

髙橋庄作酒造店

髙橋亘(蔵元・製造責任者)

1972年生まれ。東京農業大学醸造学科を卒業後、都内の地酒専門店「味のマチダヤ」、茨城県の酒蔵「武勇」での修業を経て、1996年、実家の髙橋庄作酒造店で酒造りを開始。“土産土法の酒造り”を信条とし、2018年より1枚の田んぼからひとつの酒を醸す「一田一醸」の酒造りに取り組む。

1枚の田んぼから、
ひとつの酒を醸す

田んぼは1枚1枚、個性がある。土質はもちろん、光の当たり方、風の通り方などひとつとして同じ田んぼはない。その違いから生まれる“米の表情”を、余すことなく酒質に表現できたら……。
2018年、高橋庄作酒造店の髙橋亘さんは、そう考えて1枚の田んぼでとれた米ごとに仕込む純米吟醸酒「会津娘 穣」の酒造りを開始した。明治時代初めの頃に創業し、自社田での米づくりから醸造までを一貫して続けてきた会津若松市の小さな酒蔵だ。5代目蔵元の父は、1986年に普通酒の製造を一切やめ、米の有機栽培にも取り組み始めた。
「うちでは田んぼの草取りから瓶詰めまで、蔵のみんなで取り組んでいます。毎日田んぼを見ていて1枚ごとの個性をはっきりと感じていましたから、これを酒質に表現したいと思うようになりました」

次世代に受け継ぐ農業、そして酒造り

「テロワール」とは、“土地”を表すフランス語。ワインの世界では、ブドウの出来が酒質を大きく左右するため、よく聞く言葉かもしれない。しかし、日本酒の場合、米の個性を表現するのは難しい。より複雑な発酵過程で造られるため、同じ米を使っても造り手によって味わいが大きく変わるからだ。
そこで「会津娘 穣」は、地元産酒米の五百万石を55%精米とし、日本酒度、アルコール度数といった数値をそろえることにした。もともと違う米を同じゴールに着地させるためには、吸水時間などの細やかな調整が必要であり、仕事も複雑になる。しかし、数値が同じだからこそ、明確な米の表情の違いがそこに表れるという“確信”を髙橋さんはもつ。
35年前に父が始めた有機栽培を引き継ぎ、現在、自社の田んぼは2割が有機JAS認定を受け、酒粕を発酵熟成させてつくる堆肥などで土づくりをしている。夏に田んぼの水面をのぞけば、メダカが気持ちよさそうに泳ぐ。
「有機農業は自然とのやりとりのなかで考えることがたくさんあり、無数の命とともに米を育てる楽しさを存分に味わえます。また、有機栽培米で仕込んだ醪(もろみ)は、環境の変化にたいする柔軟性や復元力があり、自らの力できっちりゴールに向かってくれる強さがあると感じています。酒になったときの違いは、“味の密度”です。有機栽培米の純米酒は、濃密なテクスチャーを感じられます」
次世代に受け継がれる農業、そして酒造りを――。「一田一醸」という前人未踏の領域に挑む髙橋さんの、円熟した酒造りが注目されている。

米を蒸す甑(こしき)からもうもうと白い湯気が立ち上り、覆った布がふくらむ

蒸しあがった米を専用のスコップで掘り出して放冷機へ。このあと、麹米は蔵人たちが布でくるんでかつぎ、2階の麹室へ駆け上って運ぶ。掛米はもろみのタンクへ

麹造り専用の部屋「麹室」に運ばれた蒸し米に、種麹(黄麹菌の胞子)をふりかける。麹室はもっとも清浄な場所。張りつめた空気が漂う

蔵の前に広がる自社田で。約4ヘクタールの自社田は8枚に分かれている。自社田の米3割、地元の契約農家の米7割を原料とする

田んぼごとに仕込む“一田一醸”の「会津娘 穣」シリーズ。それぞれ田んぼの住所が名づけられている。左から「徳久114」、「羽黒西64」、「羽黒前27」、「千苅」、「花坂境22」、「羽黒46」、「羽黒7」、「松原8」

POINT 01_田んぼテロワール「一田一醸」

1枚の田んぼでとれた米ごとに仕込む純米吟醸酒「会津娘 穣」が主軸商品。「花坂境22」「徳久114」など、田んぼの住所が酒名になっている。また、ボトルに付いているQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、上空からの田んぼの写真が見られる。

POINT 02_有機栽培米

蔵の半径3キロメートル以内に自社田が広がり、そのうちの2割が有機栽培(農薬や化学肥料を使用しないで育てること)。酒粕の堆肥などを使い、土づくりをしている。残り8割は特別栽培(農薬や化学肥料の使用を減らして育てること)。

POINT 03_残業なし

従業員の勤務時間は8時~17時、基本、残業なし。夏は週休2日祝日休み。仕込み時期も週休1日。サーマルタンクを使い、完全に温度コントロールをすることで計画的に作業を進めている。また、自動製麴機を導入し、スマートフォンで全員が温度を確認できる仕組みを導入したことで、安定してよい麹米ができるうえ、泊まり込みの作業が不要になった。

名称
髙橋庄作酒造店
創業
1868年頃
住所
会津若松市門田町一ノ堰村東755
電話
0242-27-0108
営業時間
8:00〜17:00(土・日曜、祝日休)
公式サイトへ
Text / Kyoko Kato Photo / Atsushi Ishihara

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