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NEW WAVE 02 TOJI 女子!
笹の川酒造 山口敏子

より磨かれた“笹の川らしさ”へ

笹の川酒造

山口敏子(常務取締役・杜氏)

郡山市内の老舗弁当店「福豆屋」に生まれる。1998年、笹の川酒造の10代目山口哲蔵さんと結婚。同年、笹の川酒造に入社。福島県清酒アカデミー職業能力開発校を卒業し、2008年より酒造りを開始。自らが仕込んだ「桃華」を発売する。2016年から杜氏を務める。

ゆっくり流れる“酒蔵時間”になじむまで

江戸時代から郡山で酒造りを続け、近年は東北唯一の地ウイスキーメーカーとしても注目されている笹の川酒造。1998年、現在10代目蔵元の山口哲蔵さんと結婚した敏子さんは、常務取締役として入社した。それまでは市内にある実家の老舗弁当店で、毎日何種類もの弁当を製造する目まぐるしい現場を指揮し、てきぱきと仕事をしてきた。
「当初は “どうしてみんなのんびりしているのだろう!?”と思いました。毎日、時間との勝負でたくさんの弁当を製造してきた現場と違い、まるで時間が止まっているように見えたんです」
酒の仕込みは年1回であり、人が手を加えて「作る」というよりも、微生物の働くペースで「造られる」もの。その時間の流れと空気になじむまでに数年かかったと振り返る。

入社10年目、初めて仕込んだ「桃華」

蔵に入ってまもなく、敏子さんはしぼりたての生酒のあまりのおいしさに驚く。そのフレッシュな味わいを消費者に届けたい……。そんな思いから、朝しぼった生酒がその日のうちに県内の売り場に並ぶ「笹の川 今朝しぼり」を商品化。予約制で12月、2月(もしくは3月)にしか味わえない地元限定酒として人気を得ている。
また、敏子さんには“笹の川で造りたい酒”の明確なイメージがあった。しかし、酒造りのことはまったくわからない。そこで、哲蔵さんに勧められて「清酒アカデミー」(福島県清酒アカデミー職業能力開発校)に入学。卒業して酒造技能士となり、入社10年目で自らタンク1本を仕込んで新商品を造ることになった。そうして誕生した銘柄が「桃華」。福島名産の桃を思わせる甘酸っぱさと、華やかな香りから名づけた。
2016年には杜氏に就任。1年目は何日も徹夜をして酒造計画を立て、あまりの重圧から体調を崩すほどだ った。2年目には蔵人たちの支えで福島県酒造組合の鑑評会で金賞受賞。現在はベテラン南部杜氏の佐々木政利さんを顧問に迎え、福島県でもっとも辛口の酒「笹の川 福島一辛口 いち」を発売するなど、新たな境地にも挑んでいる。
「今後は笹の川だからこそできる酒をより追求し、次世代の“笹の川スタイル”を確立していきたいと考えています」

麹造りの作業をする山口敏子さん。杜氏に就任した1年目は、責務の重さのあまり倒れそうになったが、持ち前のバイタリティと周囲の支えで乗り切った(写真提供/笹の川酒造)

左から「笹の川 純米吟醸 桃華」「笹の川 純米酒」「春酒 純米吟醸生」「笹の川 福島一辛口 いち」

CHANGE_最大の転機は?

夫と結婚したことです。日本酒の魅力を教えてくれたのも夫でした。

PERSON_元気をくれる人は?

女性経営者の友人たち。つい「私ばっかり大変」と辛く思ってしまうときでも、違う視点から意見をもらえて、よい方向に考え方を転換できます。
愚痴も聞いてもらえます(笑)。

FUTURE_あなたの未来像は?

“専業主婦”になりたい…って言ったらちょっと変かしら(笑)。
私はいつも現場のことで精一杯。
一歩退いた立場で、余裕をもって会社や社員のみなさんを
支える立場を目指したいです。
包容力もユーモアもある義母が理想です。

名称
笹の川酒造
創業
1765年
住所
福島県郡山市笹川1-178
電話
024-945-0261
営業時間
8:30〜17:00(土・日曜、祝日休)
その他
酒蔵見学は予約制
公式サイトへ
Text / Kyoko Kato Photo / Atsushi Ishihara