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NEW WAVE 02 TOJI 女子!

大天狗酒造 小針沙織

お酒は土地の文化であり、エネルギーの源

大天狗酒造

小針沙織(マネージャー・杜氏)

大天狗酒造の三姉妹の長女として生まれる。大学卒業後、福島県内のに企業に就職。2014年、結婚を機に退職し、実家である大天狗酒造に入り、酒造りを開始。現在、杜氏として蔵を率い、営業、ネットショップ運営も担当する。

データ分析に基づく酒造りに驚き

安達太良山を望み、阿武隈川がゆるやかに流れる本宮市。市内唯一、そして県内最小の酒蔵である大天狗酒造は、生産する酒のほぼ9割が市内で消費される正真正銘の“地酒蔵”だ。重しの圧力でゆっくりしぼる「槽しぼり」で全量を仕込む。
杜氏の小針沙織さんは、この蔵に三人姉妹の長女として生まれた。初めて酒造りに挑んだのは2014年、27歳のとき。結婚を機にそれまで働いていた会社を退職し、家業を手伝うことを決意した。
「お酒を飲むのは好きでしたが、酒造りのことはまったく知りませんでした。最初は親孝行として手伝うくらいの軽い気持ちでした」
しかし、蔵で仕事をするならと同年4月から「清酒アカデミー」(福島県清酒アカデミー職業能力開発校)に入学する。そこで、沙織さんは酒造りに向き合う決意を新たにした。
「ほかの酒蔵から来ている熱心な同期生や先輩方、先生から刺激を受けました。また、アカデミーでの学びでは、なぜその香りが出るのかといったことまで科学的に研究されており、データ分析に基づく酒造りの緻密さに驚きました」

神社の秋祭りに欠かせない大天狗の酒

例年、大天狗酒造がもっとも忙しいのは10月。地元の安達太良神社の秋季例大祭に欠かせない唯一の地酒として、多くの注文が入る。沙織さんはそんな土地の文化そのものである実家の酒を絶やさぬように守りたい、と思っている。
「地酒は、その土地のエネルギーのようなものだと思います。コロナ禍で祭りが3年中止となりましたが、大天狗酒造を守ることで本宮が元気になってくれると嬉しいです」
2017年には、沙織さんが新銘柄の「卯酒(うさけ)」を発売。福島県の酒米“夢の香”と“うつくしま夢酵母”を使い、甘酸っぱく爽やかで、アルコール度数14度という軽めの純米吟醸酒に仕上げた。春夏秋冬、季節ごとに酒質とラベルが替わる。
「“幸運の象徴”といわれるうさぎをラベルにモチーフにしました。可愛らしいイメージが酒質に合っているかなと。じつは私がうさぎ年という理由もあります(笑)」
近年ではオンラインを活用した酒イベントも開催。つながりを大切にした、小さな酒造りを続けている。

明治初期、創業の準備をしていたときに蔵から2つの天狗の面が見つかった。これを「神からの授かりもの」であり、吉兆としたことが大天狗酒造の名の由来。この逸話にちなんで発売されている「大天狗 天狗ボトル」

左から「大天狗 特別純米」、「大天狗 純米吟醸」、「卯酒 春」、「卯酒 夏」、「卯酒 秋」、「卯酒 冬」。沙織さんが立ち上げた「卯酒」シリーズは、春夏秋冬でラベルも酒質も変えている

CHANGE_最大の転機は?

「清酒アカデミー」に入学したとき。
県内で酒造りに携わる人たちと新たなつながりができたことが大きいです。各学年10人くらいですが、先輩や後輩とのつながりもできました。

PERSON_元気をくれる人は?

一緒にお酒を飲んでくれる人。飲んでいるときが楽しいです。
一緒に飲んでくれる人はみんな友だち!

FUTURE_あなたの未来像は?

お酒イベントなど、楽しく飲める「場面」をつくりたいです。

名称
大天狗酒造
創業
1872年
住所
福島県本宮市本宮字九縄18
電話
0243-33-2017
営業時間
8:00〜17:00(日曜、祝日休)
その他
酒蔵見学無料。要予約
公式サイトへ
Text / Kyoko Kato Photo / Atsushi Ishihara