COLUMN

ふくしまの酒 LOVERS03

ふくしまの酒は、
「料理に寄り添ってくれる酒」

ふくしまの酒を愛する「ふくしまの酒LOVERS」に、地酒への思いや、こだわりの「わたし流の飲み方」などを聞くシリーズ。第3回に登場していただくのは、日本酒利酒師の千葉麻里絵さん。ふくしまの酒を使った「日本酒ペアリング」も必見!

千葉麻里絵 (ちば まりえ)

岩手県出身。豊富な日本酒の知識をベースに、日本酒の新たな魅力を発信する酒のスペシャリスト。福島県産日本酒を発信する「FUKUSHIMA SAKE PROJECT」を企画。東京・西麻布「EUREKA!(ユリーカ)」の店主を務める。

  1. ――― はじめに、「FUKUSHIMA SAKE PROJECT」*をスタートした経緯について教えてください

    根底にあるのは「ふだん日本酒にあまり興味がない人にも日本酒を楽しんでほしい」という思いです。日本酒を飲む層は、アルコール飲料全体のシェアで見ると1割に満たない。こうした状況を打開したいと、過去にもいくつかのプロジェクトを仕掛けてきましたが、「爆発的なパワーを発揮するためにはチームを組んで発信する必要がある」と感じていました。その時、頭に浮かんだのが福島でした。福島の日本酒は、味わいはもちろんですが、蔵元同士のチームワークが他の地域に比べて格段に強いのです。そこで、以前から交流のあった蔵元さんに相談したところ、「冩楽」「廣戸川」「笹正宗」「天明」の4蔵でプロジェクトが実現しました。ラベルは、私の最初の著書で推薦文を書いてくださった高橋留美子先生にお願いして『うる星やつら』のヒロイン・ラムちゃんを描きおろしていただきました。
     
    *日本酒ソムリエ・千葉麻里絵さんと日本酒コーディネーター・山口 広幸さん、2人の酒の伝え手が、福島県の日本酒の魅力発信のために企画したプロジェクト。

    ――― ふくしまの酒の好きなところは?

    最近の日本酒は、華やかな香りや酸味など、個性を強調する傾向にあります。そんな中で福島の酒は、派手さはないものの、穏やかで、米の甘みをナチュラルに感じられる点が好きですね。日本酒って、造り手の個性が酒質に反映される酒だと思います。私は大学時代から福島との縁が深いのですが、過剰に自己主張をしない、やさしく寄り添う、包み込む、といった特徴は、福島の風土や、福島の人たちの気質を反映しているような気がします。料理との相性も抜群で、さまざまな料理や食材に、「やさしく寄り添ってくれる酒」だと思います。

    ――― 特に注目している蔵元を教えてください!

    曙酒造と笹正宗酒造ですね。天明の蔵元(曙酒造)・鈴木孝市さんと私は同い年で、私が日本酒の仕事を始めた10年以上前から仲良し。天明は今や福島を代表する酒のひとつになりましたが、個人的には、一緒に成長してきた仲間のような存在。そんな思いもあって応援しています。笹正宗は、以前から折にふれて飲んでいたのですが、正直、あまりピンと来てなかったんですけど、ここ数年、本当に味が良くなっています。私の印象では、蔵元自身の思いと、酒米をつくる農家さんなどの思いが一致した瞬間に、酒質がグッと伸びるケースが多いんです。いま最も注目している蔵元です。

    ――― ふくしまの酒と合わせたい料理(ペアリング)を教えてください!

    【天明×ゴルゴンゾーラのムース】

    この天明は、4年熟成の熟成酒と「貴醸酒」という甘いお酒をブレンドしたものです。貴醸酒とは、仕込み水の一部または全部に酒を使って造る酒で、とろりと甘いリッチな味わいが特徴。そこに熟成酒を少しだけブレンドすることで、甘みとコクをバランスさせています。ペアリングする料理は、貴醸酒の「柔らかさ」をムースの食感で、熟成酒の「力強さ」をゴルゴンゾーラチーズの強い香りとコクで表現しています。「個性の強い料理」に「個性の強い酒」を合わせると、料理だけでは感じることのなかった香りが出てきたり、逆にクセが綺麗になくなったり、混じり合うことによって思わぬ発見があるんです。そんな「ペアリングの醍醐味」を楽しんでいただける組み合わせです。

    【笹正宗×イチゴとクルミの白和え】

    この笹正宗は貴醸酒の生酒。甘くて、軽やかで、フレッシュという特徴があります。最近では「日本酒といえば辛口」というイメージが定着していますが、初めて日本酒を飲む人に「こんなに甘くて、さわやかで飲みやすい日本酒もありますよ」と知ってほしいという思いから選びました。このお酒は「天明」と比べてピュアに甘いので、合わせる食事には酸味が欲しいなと思ってイチゴを選びました。イチゴの酸味で甘さを軽くして、クルミの苦み、渋み、食感によって落ち着いた感じに。そして白和えにすることで全体をひとつにまとめています。今回はイチゴを使いましたが、季節に合わせてイチジクやシャインマスカットなど、いろいろな果物で楽しんでみるのもいいと思います。

    ――― 「EUREKA!」のコンセプト、おすすめポイントを教えてください。

    店名の「ユリーカ」は、ギリシャ語で「覚醒」や「発見」を意味する言葉。この店で日本酒と料理のペアリングを楽しむ中で、たくさんの覚醒や発見が起こってほしいという思いを込めています。日本酒は約30の蔵元から常時300種類ほどをストックしています。すべて私自身が酒蔵へ足を運んで試飲し、納得した銘柄です。店内には「Strawberry Meeting」というネオンサインが飾ってありますが、これは「一期一会」を表しています。この店で過ごす時間の中で、隣り合った人との出会い、日本酒との出合い、日本酒とフードの出合いなど、さまざまな一期一会を楽しんでほしいですね。

    ――― アルコールに強くない人が、翌日に残らないように日本酒を楽しむコツを教えてください。

    まずは「お酒と同量の水を飲む」こと。水を飲む際は、冷水ではなく「白湯」をおすすめします。なぜかというと、体温に近い水分を体に入れるとアルコールを分解しやすいから。これは私の体験からのアドバイスですが、お酒も燗酒の方が翌日に残らない感じがします。「食べながら飲む」ことも大切。私の場合、豆腐や枝豆を食べながら飲むと、翌日スッキリした気分で過ごせます。

    ――― 外呑み派? 家呑み派? おすすめの店を教えて!

    以前は完全な「外呑み派」で、家では一切飲みませんでしたが、コロナで休業を余儀なくされた時期に家呑みの楽しさを覚えてしまいました。料理やつまみをつくるときに「これとこれを合わせてみたらどうなるだろう?」という実験が楽しみなんです。自分が食べるものだから、大胆な冒険ができるんですよね。コロナ中には、コンビニメニューをアレンジした料理など新たなレシピを開発して、ツイッターで発信していました。酔っぱらったら、その場でゴロンと寝てしまえるのも家呑みの魅力ですね(笑)。

    ――― 好きなアテやペアリングは?

    家呑みのときは、何にでも粉山椒を使っちゃいます。お酒なら「うすにごり(新酒を搾った後、ろ過せずにビン詰めしたもの)」にちょっと振りかけると香りが楽しめます。おつまみなら「豆腐×オリーブオイル×山椒」「チーズ×オリーブオイル×山椒」など、オリーブオイルと山椒を加えるだけで無敵の一皿ができあがります。料理でも、肉料理、魚料理、パスタなどオールマイティ。日本酒とのペアリングに、ぜひ山椒を試してほしいですね。

    ――― 最後に、ふくしまの酒へ愛のメッセージを!

    今回の「FUKUSHIMA SAKE PROJECT」では4つの酒蔵とコラボしましたが、福島には、まだまだおいしい日本酒がたくさんあります。本当にどれを飲んでも間違いないので、まだ飲んだことのない方は、ぜひ試してみてほしいですね。「えっ、日本酒ってこんなに美味しいの?」という驚きに出会えると思います。また、米や野菜など食材のおいしさ、ラーメンの文化など、すごくいいところなので、ぜひ福島県に足を運んでみてください。

名称
EUREKA!
住所
東京都港区西麻布4-11-28
麻布エンパイアマンション2F
電話
03-6805-0760
営業時間
18:00〜23:30、土・日曜、祝日13:00〜21:00
定休日
月曜
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